賃料の不払いについて考える
今回は、あってはならないですが、賃料の不払いがあった場合について考えて行きたいと思います。当社もオーナー様から物件を預かり借主さんから賃料を毎月回収する業務を行っておりますが、少なからず賃料の不払いになってしまう借主さんもいます。
借主さんの家賃滞納を理由に契約の解除をしたい場合、目安となる滞納額と手続きの流れについて見ていきたいと思います。いつもどおりわかりやすく解説された本がありますので、その本では、賃料滞納を理由に建物賃貸借契約を債務不履行解除することが認められための滞納額は、特別な事情がない場合は、家賃の3ヶ月分が目安となります。 なお、賃貸借契約書に、「家賃の1ヶ月分(又は2ヶ月分)を滞納したときは、貸主は催告することなく直ちにこの契約を解除することができる」との特約があった場合でも、通常は、家賃の3ヶ月分を目安に解除の可否を判断します。判例は、借主に家賃滞納等の契約違反があったとしても、その内容が契約当事者間の信頼関係の破壊に至らない特段の事由がある場合には、貸主による債務不履行解除は認められないとしています。(最判昭和39.7.28、最判昭和44.11.21等)。その理由は、賃貸借契約は、貸主と借主との間の信頼関係を基礎に成り立っている継続的契約であるため、借主に契約違反があったとしても、その違反の程度が軽微である等、信頼関係が破壊されたとは言えない事情がある場合には、契約を終了せずに継続されるのが妥当と考えられるからです。実務的な感覚としても、借主が何らかの事情で1ヶ月分ないし2ヶ月分の賃料の支払が遅れた場合、その後借主が滞納分を支払って滞納が解消されることを期待できますが、滞納額が3ヶ月分にまで達すると、滞納の解消も容易でないと考えて、貸主・借主間の信頼関係が破壊されたと考えてよいでしょう。なお、過去に家賃の不払いが繰り返されてきたことや、家賃の不払い以外に迷惑行為を繰り返す等、信頼関係を破壊する他の事情が借主にある場合には、賃料の滞納が3ヶ月分に至らない場合でも、債務不履行解除が認めらる場合があります。また、これまで10年以上の長期間にわたって賃貸借契約期間が継続しており、その間賃料の滞納が生じたことはなかったが、借主の勤務先が倒産して再就職まで時間を要した場合のようなやむを得ない事情が生じて、賃料の不払いが3ヶ月に至った場合でも、その後再就職先が定まって滞納賃料を分割で支払う見込みが立ったような場合には、信頼関係の破壊に至らない特段の事由があるものとして、債務不履行解除が認められない場合もあります。
このように、賃料滞納以外の事情が、解除の可否に影響を与えることに留意する必要があります。
本では、このような記載となっております。しかし、近年は貸主と貸主の信頼関係の破壊よりも保証会社が賃料の保証しているケースが多くあり、借主が賃料の滞納をしてしまうと、今後新たな住居先の転居の審査で承認されないケースや住宅ローンにも大きなアドバンテージなってしまいますので、極力さたい事項の一つではないのではないかと思います。
桜森企画では大和市を中心に海老名市、座間市、綾瀬市などのお客様へ不動産に関わる有益な情報も随時提供しておりますので、お気軽にご相談ください。参考文献 発行:公益社団法人 神奈川県宅地建物取引業協会 相談調停委員会 執筆:顧問弁護士 立川正雄(立川・及川・野竹法律事務所)